東京・世田谷国公法弾圧事件が結審 判決日は5月13日
集合住宅の郵便ポストに日本共産党の「しんぶん赤旗」号外を配ったことが、国家公務員法違反だとして元厚生労働省職員の宇治橋眞一さんが逮捕・起訴された東京・世田谷国公法弾圧事件で、3月19日、東京高裁(出田孝一裁判長)で宇治橋さんの本人尋問と、弁護団の最終弁論がおこなわれ、結審しました。判決は5月13日です。
「一審有罪判決は事実や証言に基づいておらず、非論理的でいい加減なものだ」
控訴審の第3回公判となるこの日、弁護人の質問に答える形で、宇治橋さんの意見陳述がおこなわれました。宇治橋さんは、きっぱりとした口調で一審判決を批判し、無罪判決を求めました。
一審判決では、宇治橋さんは世田谷区内の集合住宅でビラ配布をしていたところを、現行犯逮捕されたと認定されています。しかし、その根拠となった警察官の証言はデッチ上げたものでした。これについて宇治橋さんは、「警察官の証言は何回も変遷し、法廷で明らかになった事実や証拠と矛盾し、ウソは明白でした。なのに一審は信用できるとしている」と厳しく批判しました。
また、一審判決は、宇治橋さんのビラ配布が、国家公務員としての公務の中立性を侵害したと断定しています。「私の元上司が証言台に立って、私の行為が業務に影響を与えたことはなかったし、国民からの批判や意見もなかったと証言しています。実害はありませんでした。私の行為が有罪であるというのなら、実害の証拠を出すのが筋ではないでしょうか」
一審はさらに、宇治橋さんのビラ配布行為を「政治的な重大な偏向」と認定しました。「ビラ配布は言論・表現の自由として憲法で保障された権利。それを政治的な『偏向』とした地裁判決は、人権や憲法そのものに対する認識が誤っています。事件後、職場を定年退職しましたが、厚労省や人事院から事情聴取も行政処分もなかったことは、私の行為は何も問題がなかったということです」
宇治橋さんは最後に、「裁判所が検察官の弁護人に成り下がることなく、数十万人の国家公務員の言論表現の自由を守るかどうかという重要な問題であることを考慮して、社会的な評価に耐えうる判決を出してもらいたい」と強く求めました。
続いて、弁護団が最終弁論をおこないました。
弁護団は、一審判決が74年の猿(さる)払(ふつ)最高裁判決(国家公務員の政治活動を禁止した国公法は合憲と判断)に全面的に依拠して、公務員の表現の自由を規制することは憲法違反とはならないとしていることを厳しく批判。昨年11月に最高裁が公務員であっても地方議員のリコール請求の代表者になれるとした大法廷判決を示し、公務員の中立性を口実に政治活動の自由を一律に禁止することは許されないと指摘。また、一審が宇治橋さんを「管理職に準ずる立場にある」として、統計業務を「主観的な判断が入り込む余地がないとはいえない」と強弁したことは、元上司2人の証言から明らかになった事実に反しており、公務の中立性は損なわれていないことも強調しました。
また、世界では公務員の政治活動は原則自由であり、自由権規約委員会から日本政府に対し、警察や検察、裁判所が不当な規制をしないよう、国内法を変えるべきだと勧告が出されていることを指摘。不当な言論規制の主体に裁判所をも挙げていることに留意し、当裁判所が言論弾圧の主体になってはいけないと述べました。
最後に、東京高裁が弁護側の証人を全員却下したことは裁判所の職責を放棄したものであり、実質的な審理をおこなわず「見ざる、言わざる、聞かざる」になったと批判。判決に当たっては、時代遅れの猿払最高裁判決を見直し、宇治橋さんのビラ配布が憲法で保障されている権利であることを明確にし、人間の尊厳を守る判決をするよう強く要求しました。
判決は、5月13日午前10時と指定されました。
救援新聞 2010年4月5日号