声 明
倉敷民商弾圧事件:小原・須増裁判一審判決について
2015年4月17日
日本国民救援会岡山県本部
日本国民救援会中央本部
本日、岡山地方裁判所第一刑事部(松田道別ちわき裁判長)は、倉敷民商弾圧事件:小原・須増裁判(税理士法違反被告事件)において、小原淳・須増和悦両氏に対して、各懲役10月(未決勾留日数中100日算入)、執行猶予3年という有罪判決を宣告した。日本国民救援会は、捜査機関の民商に対する弾圧を免罪し、国民主権に基づく申告納税権をないがしろにするこの不当判決に断固として抗議する。
本事件は、小原・須増両氏が、倉敷民商会員が確定申告書の作成・提出に際して、会員自身が作成した決算書の数字を、税務ソフトに入力するなどの実務援助をしたことについて、税理士法2条1項二号、52条、59条(税理士でない者が他人の求めに応じ、自己の判断で「税務書類の作成」をしたときは、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処するとの規定)に該当するとして起訴されたものである。
裁判の争点は、大きくいって次の3点であった。①本件は明らかに弾圧であり公訴権を濫用したものとして起訴無効(公訴棄却)を宣言するか、それとも先例価値のない不当な最高裁判例を受け入れるのか。②小原・須増両氏の行為は「税務書類の作成」(税理士法2条1項二号)にあたるのか否か。③両氏の行為に刑罰を科する程度の違法性(可罰的違法性)が存在するか否か。
判決は、これらの争点に関する判断において、弁護人の主張と立証をことごとく排斥し、検察の主張を祖述するだけのものであったが、論理則・経験則に反した矛盾と破綻をうきぼりにもしている。
① 公訴権濫用について。判決は、弁護団がおこなった、わが国の税制史と民商活動の歴史経過、および本件の事実経過をふまえての主張と立証について、本件捜査における差押え手続きのみに矮小化したうえで、その余の判断をいっさい回避し、公訴権の濫用といえるのは「起訴そのものが犯罪を構成するような極限的なものに限られる」とする不当な最高裁判例にしたがった判断を示した。
② 「税務書類」の作成について。判決は、まず、税理士法の立法目的が「課税の適正かつ円滑な運用を確保すること」にあると指摘する。そして、本来誰にでもできる「税務書類の作成」について、高度の専門知識を有し、監督庁による規制も受ける税理士の独占業務とし、無資格者がおこなえば刑事罰を科す規定に問題はないと強弁した。こうして、この規定を民商弾圧に「活用」したことを免罪したうえで、さらに、税理士資格のない小原・須増両氏の行為は、たとえ申告書が適正なものであり、誰にも迷惑をかけていないとしても、その立法目的を「損なうおそれ」があったと判示した。しかし、その具体的な判断においては、民商会員が自ら作成した決算書の金額等を、小原・須増両氏が税務ソフトに機械的に転記する作業において、ソフトが自動計算した数値を「変更せずに使用することを是とする判断をしている」とし、それは税理士法2条1項二号の構成要件とされる「自己の判断」を行っていることになる、というような類のものなのである。その一方で判決は、量刑の理由においては、両氏の行為により、こうした立法目的が「実質的に損なわれたものとまではいえない」としている。判決は、誰にも迷惑をかけず、立法目的を実質的に損なっていない行為に刑罰を科したのである。
③ 可罰的違法性について。弁護団の主張(本件は、誰にも迷惑をかけず、立法目的も「実質的に損なわれ」ていない事件であり、税理士法59条のような一定の行政目的達成のための罰則規定は、仮に本件を犯則とする場合でも行政罰(過料・反則金等)で足り、みだりに刑事罰を科すことは許されず、謙抑的・限定的に解釈・適用しなければならない)に対しては、まったく判断を避けている。
小原・須増両氏と弁護団は、当然に即日控訴した。国民救援会は、今後も倉敷民商をはじめとする全商連運動と共同し、「まともな」刑事司法の実現と税をめぐる民主的改革による国民主権原理の発展のために、本件裁判を禰屋裁判とともに、勝利するまで奮闘することを表明するものである。