国民救援会が新たに支援決定した冤罪事件
長野・あずさ35号窃盗冤罪事件
2005年5月10日、JR新宿駅6番線ホームで、午後9時発の特急あずさ35号松本行きで東京への出張から帰宅しようとしていた地方公務員の柳澤広幸さん(当時37歳)が、電車内で財布を盗ったと咎(とが)められ、逮捕・起訴された事件です。一審の東京簡裁は無罪としましたが、東京高裁で逆転の有罪(懲役1年2月の実刑)、最高裁で上告棄却で刑が確定しました。
事件の概要
事件当日、柳澤さんは同伴者と2人で禁煙車に乗車。出発までの時間を利用し、売店で買ったシュウマイを白い手提げ紙袋に入れ、タバコを吸うために喫煙ができる5号車(自由席)に乗り、通路で立ってタバコを吸っていると、車内が混雑してきたため、右窓側1番A席の空席に座りました。持っていた紙袋は両足の甲に乗せ、前の座席に立てかけるように置きました。一服し、紙袋を持って席を立ち、自席に戻ろうと歩き出した時に、背後からA男に「財布を盗ったろう」と声をかけられ、財布を顔の前に突きつけられました。柳澤さんは、自席を離れホームで話していたA男とB女(ともに未成年)の2人に、言いがかりをつけられ脅されたと思い、パニック状態になりました。車外に降ろされた柳澤さんは「明日も仕事があるので電車に乗せてください」と名刺を出し、事情を説明するため駅事務室へ向かいましたが警察署に連行され、A男による「現行犯逮捕」とされ、4カ月間勾留されました。柳澤さんは一貫して無実を訴えています。
一審無罪、逆転有罪
東京簡裁の無罪判決では、左図のような状況で犯行を見たとするA男、B女の供述は信用できないとしました。裁判所による現場検証も行われ、あずさ号の窓の大きさ、イスの高さ、A男B女2人と電車との距離などから、バックから財布を盗ることを目撃することは不可能であると認定。そして、2人の供述の「犯行の様子」なども不自然であり、虚偽の疑いもあること、反対に柳澤さんの主張は一貫しており信用できるとしました。また、捜査についても、逮捕時に両者の主張が根本的に違う場合は慎重な捜査が必要、と批判しました。
ところが東京高裁は、何ら根拠なく、「B女はバックのことを気にしていたというから見えないところにいたのは不自然であり、見えたという供述は信用できる」「女性らが嘘をつく動機はない」と不当な有罪判決を言い渡しました。
最高裁段階で、柳澤さんが目撃証人を求めて配ったビラを見て、A男と言い争っているのを見た証人が名乗り出ました。A男は、柳澤さんを先回りして6号車よりのデッキで柳澤さんが持っていた袋の中から財布を取り戻して追及したとしていますが、柳澤さんは座席を立ったらすぐに後ろから声をかけられたと主張しています。この証人は、柳澤さんが証言した位置で言い争っていることを目撃しており、柳澤さんの証言の正しさを裏付けました。しかし、最高裁は上告棄却の不当決定を行ったため、柳沢さんは服役を余儀なくされ、昨年1月に出所し、現在再審請求を準備中です。
〈激励先〉
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岡谷市本町2―6―47
信州しらかば法律事務所内 国民救援会諏訪地方支部気付
救援新聞 2009年3月5日号