取り押さえで安永さんが死亡
佐賀地裁付審判請求認める
安永健太さん(当時25歳=顔写真)が警察官に取り押さえられ死亡した事件で、遺族から出されていた付審判請求について、佐賀地裁は3月3日までに、警察官1人につき特別公務員暴行陵虐罪容疑で審判(裁判)に付すことを決定し、遺族に通知しました。
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安永健太さんは、佐賀市内にある知的障害者の通所施設に通っていましたが、2007年9月25日午後6時ころ、佐賀市南佐賀1丁目の国道上を自転車に乗って帰宅中、パトカーから停止を命じられたあと、警察官数人によって取り押さえられ、後ろ手に手錠をかけられるなどした直後、死亡しました。
近くのレストランや通行中の車内から見ていた人から、複数の警察官が暴行していたとの目撃証言があり、健太さんの父親、安永孝之さんは08年1月17日、現場で取り押さえた警察官5人を特別公務員暴行陵虐致死容疑で佐賀地検に刑事告訴しました。
しかし、佐賀地検は「警察官の取り押さえは保護の範囲、また取り押さえと死亡には因果関係がない」として3月28日に不起訴処分を決定。孝之さんはこれを不服として4月3日、5人の警察官を裁判にかけるように付審判請求を佐賀地裁に行いました。
決定をした神山隆一裁判長は、「当初現場に駆けつけた制服警察官2人のうち1人が安永さんを手拳で殴打した」と、この警察官の暴行を認定。しかし、他の4人の警察官については「職務行為を逸脱した違法なものとはいえない」として、請求を棄却しました。また、暴行と死亡との関係については、地裁が独自に鑑定した結果として「多数の傷があるが、死因となる傷は認められない」として、致死罪容疑を否定しました。
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この付審判決定について孝之さんは、「警察と検察は同じ穴のムジナと思ってきたが、これでやっと真実を明らかにするための裁判が始まる」と記者会見で話しました。一方、佐賀県警側は「警察官の行為は必要・適正なものだったと思っており、残念だ」とのコメントを出しました。
今後、原告代理人以外の弁護士が検察官役を務め、刑事事件として裁判が始まります。
遺族の支援団体「安永健太さんの死亡事件を考える会」が全国に呼びかけた付審判請求の決定を求める署名は3月3日現在、約11万筆を数えました。
なお、孝之さんと、健太さんの弟の浩太さんは2月26日、「健太は警察官の暴行によって死亡した」として、国家賠償法にもとづき佐賀県を相手取り、約4200万円の損害賠償を求める民事訴訟を佐賀地裁に起こしました。
救援新聞 2009年4月5日号